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あ、夏コミお疲れ様でした!
※ヤンデレ注意! なのはさんが病んでます。
貴女に関するすべてを、私のものにしてしまいたい。
幸せも、不幸ですらも。
あの娘が、泣いている。
膝を抱えて、蹲って。
それでも強がって、声はあげない。
鼻をすする音だけが、静かに。
そんな彼女に、私の影が投げかかっている。
彼女はわたしを見ない。
自らを苛んでいるから。
彼女の悲愴を、彼女のものだけにしようとしているから。
わたしはゆっくりと泣いているその娘に近づく。
彼女は顔を上げない。
屈みこんで、見える艶やかな金色を掬いあげる。
どこかそれは、色褪せたような。
彼女のこころに合わせて、霞んでしまったような。
わたしはそれを掻きあげて、そっと頬に触れる。
湿る。
濡れる、わたしの指が。
あの娘の流したもので。
びくり、と目元が震える。
そこでようやく、彼女は顔をあげた。
涙でくしゃくしゃに、なった顔。
悲痛そうに、歪んだ顔。
そんな顔で、しかし彼女はわたしに向かって、健気にも笑みを作る。
私は大丈夫だよ、とでもいう風に。
大丈夫だから、と。
そんな、ぐしゃぐしゃな笑み。
「…………ど、うして」
その眼を、じっ、と、眉ひとつ動かないよう顔神経を強固に支配して見詰めていると、掠れ掠れの声が。
言葉を、紡ぐ。
「どう、して、私は。皆のきもちに、応えてあげられない、のかな」
それはわたしがいるからだ。
その答えに彼女は辿りつけない。
彼女は惑わされているから。
普段なら身に沁みているその感覚を、彼女は今取りだせない。
わたしは、彼女を惑わすものを憎悪する。
「どうして。彼を。悲しませるしかできなかった、のかな。私は」
私はひどい、と彼女は言う。
その言葉で更に自分を傷つける。
悪いのは自分だから、と。
これは私が悪いだけなんだから、と。
必死に彼を弁明する。
わたしはそれを黙って聞いている。
「わた、しは。サイテーだ」
ひずんだ泣き笑いで。
狂ったような、表情。
狂わされた表情。
わたしは頬に当てたままの指を見る。
てらてらと、それは輝きを湛えている。彼女の涙で。
わたしはそれを掬って口元に運ぶ。
ぺろりと、それを舐め取る。
彼女はそれを、曇った瞳でぼぅ、と眺めている。
「誰」
彼女の笑みが引き攣る。
狂った笑みが、途端に人間らしく。
わたしは表情を変えない。
「ち、ちがうちがうちがう、ちがうのなのは、私が悪いだけなの、私がひどいことして勝手に悩んでるだけなの、彼は何も悪くない!」
彼女は血相を変えて口早に釈明する。
前回それを口にしてしまったときにどうなったのか、思い出しているのかもしれない。
わたしは再度、誰、と問う。
そっと肩に手を当てて、訊く。
彼女はまた泣き出しそうな顔になって、それでも気丈に首を横に振る。
恐怖。
恐怖だ、彼女の表情は。
私が与えた。
私が与えた、彼女の恐怖だ。
震えた肩。
なにもしない、と彼女は問う。
なにもしない、とわたしは答える。
「×××××」
わたしはその名を頭に刻みつける。
わたしのものを奪ったそれの名を。
そしてそれを表情には出さない。
「な、なにもしちゃダメだよ、悪いのは私なんだから!」
即座に続けられた念を押す言葉に頷いて、わたしは彼女を引き寄せて、胸の中に収める。
あ、と短い声が漏れて。
やっと、彼女は泣き声をあげ始める。
安心しきって。
ちいさなちいさな、声。
何度も何度もごめんなさいと、呟く。
わたしはそれに嫉妬する。
――フェイトちゃん。
貴女はこんなにも脆くて弱い。
それを支えるふりをして、わたしはこんなことを考えている。
貴女を抱きしめながら、貴女に不幸を与えた人間への報復の方法を考えている。
貴女の喜びを、悲しみを。
もたらすすべてにわたしは憎悪を覚える。
わたし以外が起こしたこころの揺れに、激しく憎悪する。
嫌悪でなく、嫉妬で。
わたしでないものが彼女のものに手を出したという、嫉妬によって。
わたしの中で、憎悪が囂々と燃え上がる。
だからわたしはこんなことを考えている。
貴女に関するすべてを、わたしに起因してしまいたいと。
貴女の幸せを奪うものにさえなりたいと、わたしは考えている。
「I want to be even a breaker of your happiness」
デレてないけどヤンデレ。
最高のヤンデレは、自分以外に与えられた幸せだけではなく、不幸にも嫉妬するのではないか、とか。
状況としては、誰かに告白されたフェイトちゃんが、なのはさんも居ることだし「はい」と言えず、そのことで気を揉んでいる状態。
それをどこからか聞きつけたなのはさんが、フェイトちゃんのもとを訪れた辺り。
お読みいただきありがとうございました。